2013年9月30日月曜日

伊差川洋子の世界展


伊差川洋子染色工房で制作された紅型振袖が、沖縄を出て東京で展示されることになりました。
普段はなかなかお見せできない紅型のお振袖が多数お披露目されます。お時間のある方は、ぜひご来場下さい。

日時 : 2013年10月9日(水)~15日(火) 11時~18時
場所 : シルクラブ(東京都中野区沼袋2-30-4) 
電話 : 03-3389-4301

年々、成人式にお振袖を準備されるご家庭が減ってきているように思われます。そのせいか、お振袖を染めている紅型工房は、ほとんどありません。
それでも私たちはお振袖を染めます。
その理由は、先生の書かれた文章の中にあります。


日本の伝統の技を守るためには・・・
                                 伊差川洋子
 

 ハレの日を間近にした娘たちを美しく装わせたいという親の気持ちに娘たちは、「振袖より、クルマかパソコンのほうがいい!」「きものは、めんどくさあいし、無駄!」とケンもほろろの返事が一般的になっています。
 確かに、窮屈で何回着るかわからない「振袖」におカネをかけることは「無駄」なことかもしれません。
 戦後、女たちは長い髪を切り、いとも簡単に日本古来からの「きもの」を脱ぎ捨てて自由になりました。家のなかからは、「畳」の生活が少なくなり、イタメシやフランス料理を好んで食べるようになりました。
 街中では、若者が茶髪やブルー、グリーンのコンタクトをはめ、まるで外人のようにパフォーマンスに興じています。
 合理主義という名のもとで、私たちの祖先が、何百年という「歴史」をかけ「培ってきた日本の文化」のひとつ一つが今、怪しい状況になっています。
 日本の伝統文化を真摯に支えてきた「職人」が今、瀕死の状況となっています。「きもの」を着る女性が少なくなった現在、和紙を漉き、渋を塗るといった技の継承に、長く後世に残っていってほしい「型紙職人」や「型彫師」が喘いでいるのです。
 かつて祖母や母が、仕立て上がりの、きものの衿を柱にこすりつけ、「娘が健康で成長しますように・・・」と願ったのは、もう遠い昔の話でだけとなるのでしょうか。
 着かけたきものが、風通しのため鴨居に何枚もかけられた風景は、もう見ることがないのでしょうか。祖母から母へ、そして娘から孫へ「一枚のきもの」から家の歴史や文化を語り、伝えていきたいものです。
 こうした不安定な時代にあっても、美しいもの、よいものをつくりたいと頑張っている若者も大勢います。
 そんな「作り手」たちだけではなく、「使い手」たちも一緒に「日本の文化」を守っていこうとする気概を持ってもらえたら、とただただ願うのです。
                                       「The Neighbor (1999年5月)」



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